本日はふんわりした群ようこ作品をご紹介。
彼女の作品といえばOLや主婦といった市井の人々の、何気ない日常のゆる~いやりとりを軽妙な語り口でつづった物語が多いですよね。
時には毒をきかせたエピソードを放り込んでくる妙技も披露されますが、全体的にはほのぼの~と読み進められます。
「かもめ食堂」は、珍しく海外が舞台(しかもフィンランドって)のものですが、彼女の世界観はなんら揺るぎません。
小一時間でサクッと読める内容ながら、読了後もほんわかした気持ちが残る、氏の著書の中で一番好きな作品です。
主人公は38歳のサチエ。料理好きが高じて、海外で素朴な食堂をもつことを夢見る女性です。
小柄でかわいらしい外見で、海外では「子ども」と間違われる彼女ですが、武道家の父のもとで才能を磨かれた、合気道の名手でもあります。
そんな彼女がヘルシンキで「かもめ食堂」を始めるのですが、「ふらっと入る人待ち」で広告などは一切うたないスタンスのため、お客様ゼロの日々が続きます。
やっと来てくれたのは、日本かぶれの貧乏学生。しかしそれを皮切りに人の縁が広がり、日本人女性のミドリ、マサコと共に食堂を切り盛りしていくことになるのです。
著者の群氏ご自身は独身ながら、主婦の屈託を描くのが非常にうまい方です。
しかしこの作品では30代のサチエ・40代のミドリ・50代のマサコという、3名の独身女性が主な登場人物です。
バリキャリですらなく、ただゆるりと婚期を逃した、妙齢(すら通り越した)の女性陣。
独身であることに焦ってもいないし、後悔してもいない。しかしなんとなく現状に疑問を抱き、殻を破ろうとしている平凡で自然体な女性たちです。
同じく40代後半独身(かつ海外旅行好き)の私には、うんうん、とうなずける生き方なのです。
こちらの作品、映画も素敵です。小林聡美・片桐はいり・もたいまさこという個性派実力女優勢のラインナップ。これだけでも期待が高まるというものです。
小説にしろ映画にせよ、ぜひな~んの予定もないのんびりした休日に、コーヒー片手にお楽しみあれ。
Book:12「かもめ食堂」(2008)群 ようこ 著

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