SFドラマの代名詞といっても過言ではない、伝説のシリーズですね。
超常現象を主題として、まして政府の陰謀論まで持ち出す、一種「キワモノ」でありながら。その壮大なスケールとキャラクター設定の秀逸さで、多くの視聴者を虜にしました。
日本人にとっては、職場の上司であっても「下の名前で呼ぶ」のがアメリカ文化!と思っていたところに、主演の二人が「モルダー」「スカリー」と名字で呼び合うのも、かえって新鮮だったのでではないでしょうか。
私自身は学生時代、地上波での再放送などもあり、なんとな~く見始めたのですが。
徐々にその奥深さに魅了され、これはきちんと最初から見なければ!と思い立って、レンタルビデオ店へ駆け込んだものです。
まあ「ガッツリはまった」というよりは、謎が多すぎるので順序だててスッキリさせたい、と感じたことが発端だったように思います。
で、スッキリしたのか?むしろモヤモヤが深まることに。
しかしそれこそがこのドラマの魅力であることを、徐々に得心していきました。
いずれにせよ、映画『X-ファイル ザ・ムービー』(1998)が公開されることを知った時には、急いでそれまでのドラマシリーズをコンプリートし、喜び勇んで映画館に足を運んだあたり、すっかりファンになっていたのは確かです。
FBI捜査官フォックス・モルダーは、通常の捜査で解決できなかった事件を扱う「X-ファイル課」にただ一人所属する人物です。
科学での解明が不可能、というよりオカルトすぎて見向きもされないような事件を扱う(あるいは探し出す)変わり者の彼は、地下室の一室をあてがわれ、冷遇されている状態でした。
しかしそんなことはお構いなしに、信念を貫き通すことで、一部組織から煙たがられることに。
そこに医師免許を持ち科学者を自認するダナ・スカリー捜査官が、パートナーとして送り込まれますが、彼女の真の目的はモルダーの監視でした。
目を輝かせて非科学的な「事件の真相」を語る彼を、はじめは白い目で見ていたスカリー。
しかし敬虔なクリスチャンでもある彼女は、彼の中のある「信心」にも似た、真実を追い求める純粋さと揺るぎない決意に、次第に心を動かされていきます。
やがて捜査官としての彼の優秀さにも気が付き、やがて捜査の手助けをするようになりますが、あくまでも「自分の目で見た事象しか信じない」強硬な姿勢を崩さず、モルダーの提唱する説を跳ね返し続けます。
実際にUMAなどに対峙するモルダーに対し、あと一歩のところで「それ」を目にしないスカリーが、すべてを否定する状況にイライラします。
それでもモルダーの信念の強さに感銘を受け、スカリーが自分を送り込んだ組織に歯向かってでもモルダーを支持する様になるっていき。互いのためならば命を投げうつのも厭わない強い「絆」を培っていく過程は、もはや極上のヒューマンドラマの様相を呈していきます。
シーズンが進むにつれ最強の「バディ」となっていくも、男女間を匂わせるような要素は一切ありません。
それはそれで素敵でした。
ちなみにその時分よしもとばななが著書の中で、男女を超えた関係性の登場人物に対し「モルダーとスカリーのような」という表現を使っていてニヤニヤしたものです。
しかし聡明な美男美女ですから、視聴者は次第に彼らの「恋愛」を所望します。
さすがに少しずつ、二人の間に「友達以上」の空気は漂ってきますが、頑ななまでに「仕事上のパートナー」の距離感は保ったままでした。
そんな中ついに!
たまたまニューイヤーのカウントダウンの場に居合わせた二人。
モルダーが微笑みながらスカリーにキスを…。
カウントダウン・キスの習慣よ、ありがとう!
快哉を叫んだファンが世界中に何万人いたことでしょう。
私はとりあえず「ギャー」とわめきながら何度も巻き戻しました(もちろんビデオですので)。
なんならドラマ・映画で一番胸キュンした瞬間かもしれません。
とまあそんな二人ですが、シーズン8でモルダー役デイヴィッド・ドゥカヴニーが降板し、『ターミネーター2』で適役として知られるロバート・パトリック扮するドゲット捜査官がその後釜となった時には、ファンというファンが驚愕したはずです。
私も見るのをやめようかと逡巡しましたが、ほぼ義理で視聴を続けました。
しかし意外にも、このシーズンがカンフル剤の役割を果たし(私もシーズン半ばから好きになりました)。無事戻ってきたモルダーを迎えた、最終シーズンへのよい助走となったのです。
基本1話完結(毎回未完結)ながら、全体を通して明らかになっていく謎もあり、スピンオフ的な物語や、スカリー演じるジリアン・アンダーソンが監督をする回も織り交ぜられ。
これだけ長いシリーズながら、中だるみやマンネリはほとんどないですね。
モルダーとスカリーの上司スキナーが、かなり時間をかけて味方となったり、時間を経て再登場するキャラクターがいたり、準レギュラー「ローン・ガンメン」がいい仕事をしたり。
見るほど深みにはまり、スルメのごとく味わい続けられる作品です。
といったものの、ファンゆえに苦言を呈するとすれば。
ドラマシリーズ終了後の、2作目の映画『X-ファイル:真実を求めて』(2008)までは許容範囲ですが、一度完結したシーズン9から10年以上経って公開された、シーズン10。これに関しては残念ながら完全なる蛇足と思っています。11にいたってはもはや見てもいませんが。
各シーズンのエピソードごとのあらすじ、ネタバレ、感想。
加えてトリビアもわんさかネットで紹介されていますので、私からはこのくらいで締めておきたいと思います。
いつ見始めても遅いことはありません。Xファイルのひも解く不可思議な世界へ、一歩足を踏み出してみませんか。
Series:18「X-ファイル」season1(1993)-(2001)

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