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Book:40「黒猫」(1843)エドガー・アラン・ポー 著

エドガー・アラン・ポーといえば、推理小説の開祖と言われる人物です。
鋭い洞察力で未解決事件謎解きをする友人の様子を、「語り手」が描写する『モルグ街の殺人』。
半世紀後に刊行されたコナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ』シリーズでは、同様の手法でワトソン博士が語り手を担い、このジャンルを強固なものとしました。

かの江戸川乱歩のペンネームの由来としても有名ですね。
ほかにも多くの作家に強い影響を与えたポー。彼がいなければ、現在この世に「推理小説」の形態はなかったであろうと言わしめる存在です。
散文も高く評価されていますが、さらに数多く執筆された「ゴシック小説」では、大衆の好みを反映させつつ耽美的でダークな世界観が読者を魅了してきました。『アッシャー家の崩壊』などが代表的ですね。

そして紹介したいのはというと、超有名短編小説「黒猫」です。
私は、伏線がガシガシ回収されていくミステリーは大好きなのですが、いわゆる「探偵もの」があまり得意でなく(回りくどい「演繹法」が駆使されるシステムが疲れる)、より物語性の高い作品に魅力を感じます。
よってポー作品は、虚実の境が薄い、その現実離れした世界観こそ醍醐味、と思っている一人です。

そんな観点から挙げたこの作品は、ある男の独白から始まります。
自身を、かつては動物を愛する心優しい人物だったと語る彼。
それがという悪魔によって、残忍な動物殺しに堕落したというのです。

多くの生き物を飼い愛でていた自身と、それを受け入れていた愛妻。
中でも美しい黒猫の「プルートー(冥界の神)」を特別愛していたのに、酒によって目覚めた残忍性により、自らの手での片目を奪い、最後は首をつって殺してしまう。
黒猫=魔女の何かしら不吉な存在であることをほのめかし、己の罪はまるで他人事のよう。
ところがそんな彼のもとに、プルートーそっくりの黒猫が現れると、次第に自責の念を感じるようになり、狂気を呼び起こされていきます。

ポー自身酒乱で、仕事や恋人を失う羽目に陥っています。
酒を愛する文豪ではなく、酒におぼれた才気から漏れ出た本音でしょうか。

とても短い作品ですが、物語の原点をみることができると思います。
まだ読んだことのない方は、まずは青空文庫(著作権が消滅した作品や著者が許諾した作品を、電子書籍として無料公開)をぜひご活用下さい。私はアプリを落として、折に触れて過去の名作に目を通していますよ!

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