原題名”The Story of Us“の”Us(私たち)“を音の似ている”Love(愛)“に変えた邦題は、うまいですしわかりやすいですが…「愛の物語」ねえ。少々陳腐になった感は否めません。
のっけから悪口すみません。
さて「私たち」もしくは「愛」の物語ですが。ボタンの掛け違いから様々なことが合わなくなり、結婚15年目で破局の危機を迎えた1組の夫婦のお話です。
浮気でもギャンブルでもDVでもモラハラでもない。
正直この映画を見た大学生の時分、なんで離婚しようとしているのか理解に苦しみ、いわゆる倦怠期といううやつかあと結論づけたものの、最後まで首はひねったまま(なんなら未婚アラフィフの今でも)でした。
演じるのは夫ベンをブルース・ウィリス、妻ケイティがミシェル・ファイファー。
私的に、ブルース出演作品に間違いなし!という思いで視聴した作品でした。
二人は、子どもたちがサマーキャンプで長期留守にしている間、冷却期間として別居生活を始めます。
どちらかといえばベンはやり直そうとしているものの、ケイティが頑なでちょっと憎たらしい。
しかし離れてみたことで、各々自身を顧みる形で、これまでの思い出の数々が蘇ってきます。
楽しかったこと、悲しかったこと、嬉しかったこと、辛かったこと。
出会いからの歩みがフラッシュバックのように映し出され、互いに愛し合っていることを自覚しながら、顔を合わせると口論になってしまう現状が切ない。
そしてこの映画を語るのに外せないのが、挿入歌”I Get Lost“。
この映画のために、ギターの神様エリック・クラプトンが書き下ろした楽曲です。
何をどうすればよいのか途方に暮れるベンの気持ちを代弁するように、この曲が流れるのです。
I'm sorry.
ごめんね
Why should I say I'm sorry?
なんでごめんって言わなきゃいけないんだろう
If I hurt you,
君を傷つけたとしたら
You know you've hurt me too.
わかるはず、僕も傷ついてるって
私の意訳ですが、これが神のアコースティックギターの調べにのせ、渋い歌声で挿入されてくるのです。これだけで泣けます。
映画『フェノミナン』(1996) の挿入歌、エリック・クラプトンとベイビーフェイスの「チェンジ・ザ・ワールド」に一度ノックダウンされていましたが、それを思いっきり凌駕してきました。
音楽の力はすごい。ちなみにこの2曲が入ったアルバムは聞き倒しました。
と楽曲ありきに言ってしまいましたが、もちろん二人の演技力は言うまでもなく素晴らしい。
どこにでもいる普通の夫婦、誰もが抱える悩み。そのドキュメンタリーを見ているかのようです。
今は何かとピリピリしているケイティも、出会った頃はユーモアあふれる女性でした。
ケイティが「あの頃の楽しい女の子は、私の中にいるのよ」と、泣きながら当時のふざけた仕草を再現する場面は、とても心に響きます。
意外と評価の高くない映画なのですが、個人的には好きな映画トップ10に入る作品です。
というわけで一人でも多くの方にゴリ押ししたい。
実際に倦怠期の夫婦には痛いかもしれない。むしろ未婚の人に響くかもしれない。
いずれにせよ、一度でも誰かを愛したことがある人なら、共感できる作品だと思います。
ぜひ視聴して、二人の行く末を見守ってみてください。
コメント