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Series:23「MANIFEST/マニフェスト」season1(2018)-4(2023)

ワーナー・ブラザースによりシーズン6まで計画されていたものの、視聴率低迷を受けシーズン3でお得意の打ち切りとなった本作。
シビアなのは結構ですが、あきらかに質の高い作品を、未解決のまま切って捨てるやり方は、つくづく固定ファンへの裏切りであり製作側の怠慢だなあ、と感じます。
まあ慈善活動でも芸術創作でもないので、企業としてはちゃんと仕事をしているだけですけどね。

ありがたいことにこの作品は、シリーズ存続を願うファンの声を受けNetflixが救済。シーズン4が製作され、無事物語を締めてくれました。(まあNetflixも自身の製作ドラマを平気で打ち切りますが)

2013年4月7日ジャマイカを飛び立った828便は、途中謎の乱気流に巻き込まれるも、無事ニューヨーク・スチュワート国際空港へ着陸。
ところが彼らの到着に際し、空港物々しい雰囲気に。
そして降り立った191人の乗員・乗客へ、現在は2018年11月4日だと告げられるのです。

彼らにすれば、ほんの数時間のフライトを終えたところ。
にもかかわらず離陸からすでに5年半の時が経っており、その空白の期間、彼らは機ごと行方不明とされていたのでした。
その無事を喜ぶ、大勢の家族友人たち。しかしその月日は決して短いものではありませんでした。
恋人や配偶者にはすでに別のパートナーがいたり、身内がすでにこの世を去っていたり。
乗客の一人である10歳の少年カルは、再会した双子の妹オリーヴ16歳の姿で現れたことに戸惑い、怯えます。

それでもなんとか日常を取り戻そうとする乗客たち。
そこへ追い打ちをかけるように、彼らには何かを示唆するようなが聞こえるようになります。
自分たちにだけに囁かれるその声「呼びかけ」に惑わされる彼ら。さらに映像(ビジョン)も加わるようになり、混乱のさなか彼らはその意味を見出そうと必死で奔走します。

一体828便に何が起こったのか。

乗客である刑事ミカエラ数学准教授の兄ベンはその謎に迫るべく画策し、同じく乗客の医師で研究員のサンビを加え、アメリカ国家安全保障局ロバートの手を借りながら現象の解明に乗り出します
しかし乗客たちがみな協力的なわけではなく、周りからは奇異な目で見られ。
かと思えば、逆に彼らの存在を熱狂的に支持する団体も現れ、混乱は増すばかり。

828便から連想される、新約聖書828節の「万事が益となるように共に働く」という一節がキーワードになるように、その神がかった状況から、乗客の中には新興宗教の教祖となる者も。さらに信仰をもたなかった者にも様々な「試練」が訪れます。
そうしてそれぞれの思惑が入り乱れ、真相はさらなる闇の奥へ。
さらに828便以外でも、同じような現象が起きていたことが判明するのです。

登場人物が多く謎が謎を呼びますが、よく練られたストーリースピーディな展開で、見るものを飽きさせません。
登場人物たちの人生もクロスオーバーし、それぞれの抱える問題も表面化していきますが、そこに多くのドラマがあり、それらが集約されていく過程も見ものです。
彼らを傷つけ悩ませ、そして救いもする。果たしてこの現象の行く末は。

繰り返しますが、よくもまあこれだけの登場人物を置き去りにして、未完で投げ捨てようとしたものです。以前紹介した『フラッシュフォワード』がクリフハンガーでの打ち切られたことへの怒りが、ふつふつと再燃してきます。
とにかくこの作品に関しては、物語の物語性を心から愛する一人として、きちんと完結できたこと。そしてもしかしたら短縮されたがゆえに、美しく昇華されたこのラストを、今となってはただ感謝です。
とまあ愚痴もはさみつつ、見事完走を遂げた珠玉のSFミステリーを、ここに紹介する次第です。

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