著名な医家の出で、ご自身も医学博士でいらっしゃる南雲医師。
40代半ば、仕事のストレスのため体重が15kgも増加したそうです。
メタボリック体型となり、実年齢より老けて見られる上に体調は悪化。命の危険すら感じ、あらゆる減量方法を試した結果、たどり着いたのが「一日一食」というやり方だったとのこと。
その方法により、ダイエットに成功しただけではなく、健康はもちろん、若々しい見た目を手に入れることもできたというのです。
その後はコメンテーターなど、テレビでもご活躍しておられますので、皆様もご覧になったことがあるのではないでしょうか。私も10年ほど前、あるバラエティ番組で南雲先生を拝見して、そのお話に興味をもち何冊か著書を読ませていただきました。
その中で、個人的に一番わかりやすかったのが本書になります。
先に私見を述べさせていただきたいのですが。
この手の「健康法」を知識として取り入れる際には、大前提として、日進月歩の医療(科学全般)によって変容していく(効果がない、いっそ体に悪い、といった方向に転じる)可能性があることを、常に念頭におくべきだと思います。その上で自身が納得して、生活に取り入れるのは大変結構なことです。しかしその情報の動向は常に意識し、アップデートしていくことが肝要でしょう。
さて本書の内容ですが。
南雲先生は、当然医学の知識が豊富におありなので、減量を始めるにあたり、まずは王道のカロリー計算を取り入れられたそうです。しかし楽しくないし続かない。
ダイエットの原則は続けることですから、無理は禁物です。
試行錯誤を重ねて、ご本人に定着したのが「一汁一菜」で野菜たっぷり、お肉控えめのお食事だったとのこと。
はじめはお肉が恋しくなったものの、やがて口にしてもおいしいと感じなくなったとのこと。この食生活で何より、ひどかった便秘が解消され、さらに体臭がなくなったそうです。
菜食主義にならなきゃいけない、ということではありません。
ですが具沢山のお味噌汁や、旬野菜を煮びたしたおかずなど、日本人ならお好きな方は多いでしょう。
体に必要なもの=自分が欲するもの、であれば心身ともにいいこと尽くしのはずです。
南雲先生はここで、無理なく体の声に沿った生き方ができるようになった過程と、その方法を伝えられています。
まず大事なのは、タイトルでもあげられている通り「空腹」の時間を作ること。それによって長生き遺伝子であるサーチュイン遺伝子が活発化するのです。
当時何かと話題になっていたこの「サーチュイン遺伝子」について、かなり丁寧な説明がされているところも、本書のおすすめポイントです。
飢餓に備えて進化した人類の体は、飽食により体の機能に異変が起きているとも言えます。
それを整えることで、血管や皮膚が若返り美しい見た目にも。
そう、健康はそのまま外見にあらわれるのです。
また、本書の中で私がもっとも感銘を受けたのは「完全栄養食」という考え方です。
健康によいのはバランスの良い食事。しかし栄養学に基づいた、きちんとした食事内容を毎回考えるのは、とてつもなく大変なこと。
そこで簡単に栄養のバランスが整うのが、先生の提唱する「丸ごと食」です。
皆さんは「卵は完全栄養食だ」と聞いたことはありませんか?
いわゆる5大栄養素がすべて含まれている食品という意味です。
しかし先生が言うには、すべての食材は摂り方次第で完全栄養食になるというのです。
その方法が魚なら「頭から骨、しっぽまで」、野菜なら「皮やヘタなど捨てるところも全部」。
そう何でも「丸ごと」食することです。
だからマグロのトロだけなんて食べ方だと栄養素は偏りますが、小魚をバリバリ一尾食べることで、そこに必要な栄養素はすべて備わっているのです。
好きなものを好きな部位だけ、たまに食べるのは問題ないけれど、いつもそうだと栄養も偏る。納得です。
これはわかっていたようで、考え直させられる見方でした。
お肉にいたっては、そのもととなる動物を丸々(内臓まで)食べるのはまず無理ですもんね。
しかし野生の動物、例えば肉食動物は狩りをした獲物の大部分を食します。一見栄養が偏りそうですが、丸ごと食を実践していますから、理にかなっていますね。
この本に色々教えられましたが、実は私は個人的に「一日一食」自体はあまりよい健康法だと思っていません(南雲先生も万人にはすすめていません)。
というか、少なくとも私には合っていないと考えます。
私は朝ご飯をしっかり食べてから一日を始めたい。ランチは楽しみだし、夜はゆったり晩酌したい。
しかし朝食の是非は、かつて何度も話題になっています。また昼食は確実に眠気を誘いますから、精鋭のビジネスマンたちは抜くことで効率化を図っているとも聞きます。
朝昼の食事の準備や、食事時間そのものを、まるっと無くすタイパの面でも、一日一食は非常に有用でしょう。
しかし一日一食は、一度やめて三食にもどすと、おそらく太りやすくなります。無理をして一定期間行うものではなく、一生続けられるくらいに生活サイクルが整えられたり、自身のリズムに合うならば最高でしょう。
ヨギーが一目置く片岡鶴太郎氏などは、朝食のみで生活されているお方です。一日一食を実践する方はそれなりにいらっしゃるとしても、それを朝食で行える方はかなり稀でしょう。
しかし氏は、そのやり方が合っていて、我慢や節制をしているわけではない、というところが重要だと思います。
完全栄養食しかり、そのほか睡眠の大切さなどにも言及されている本書は、生活リズムが狂いがちな現代人に「気づき」をもたらすヒントがたくさん詰まっています。
絶対を求める必要はありません。何か一つでも、自身の生活をかえりみる一手になる、そんな意味で実に有効な著書として多くの方にすすめたい一冊なのです。
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