アメリカのテレビネットワークABCが、大ヒットドラマ『LOST』に続き制作した作品です。
『LOST』の俳優陣も参加し、パイロット版作成に10億円を注ぎ込んだと言われていますので、その意気込みのほどが見て取れます。
そんな第1話は期待通りの盛り上がりを見せたものの、シーズンの途中で長期の休みが入ったことなどもあり、視聴者が離れてしまったようで…。先に断っておきますと、1シーズン全22話をもって打ち切りとなってしまった作品です。
しかしご覧になった方はご存じでしょう。めちゃくちゃ面白いドラマです。
普通に考えて、打ち切りなんて正気の沙汰とは思えません。
しかし、アメリカのドラマ制作は、日本とは比べものにならない資金が動きます。よって視聴率が低いと、シビアな対応を下します。
私自身、友人にすすめられてこのドラマを見始めたのですが「続きはないからね」と念を押されつつ、しょせん打ち切りのドラマだし暇つぶし程度にいいでしょ～と高をくくっておりました。
そしてすべての回を見終えて、しばらくもんどり打つくらい続きを求めました。
日本だと、どんなにつまらないドラマでも途中で放り出すことはあり得ない。
まして内容の濃い、コアなファンも少なくないドラマを、未解決状態で終わらせるなんて…。
しばらくは腹立ちがおさまらなかったくらいです。
さてそんなお話の内容ですが。
2009年10月6日午前11時から11時2分17秒77までの時間、世界中の人々が同時に意識を失い（ブラックアウト）、6ヶ月先の2010年4月29日午後10時のビジョンを見ます。
そしてこの現象はフラッシュフォワードと名づけられました。
すべての人が一斉に気を失った状態に陥ったため、走行中の自動車は玉突き多重追突を起こし、手術中の患者は死亡、航空機は墜落、世界中で多くの事故が発生しました。
FBIはその謎について捜査を開始。全世界規模のインターネット掲示板に、皆の未来視を書き込むことで未来の全体像を掴もうと試みます。
世界中の人々が各々の未来を見る共通体験に盛り上がる中、未来が見えなかった人々がいることが判明します。
どういうことか？つまり、彼らには未来がない。この半年以内に死んでしまう人々であることが示唆されていたのです。彼らの一部は未来を悲観して自殺するなど、世の中は混乱に見舞われます。
主人公である特別捜査官マーク・ベンフォードの同僚ディミトリも、未来を見なかった一人でした。
その婚約者は、彼との結婚式の未来を見たと主張しますが、その内容をひも解いてみると、それは彼の葬儀に結婚式を模したものだったことがわかります。
ディミトリは、自身の命をかけて謎解きにあたります。
そんなマークは、アルコール依存症から立ち直ろうとしているのに飲酒してる未来を見ています。
その妻で医師のオリビアは、見知らぬ男性とともに過ごし、その男性に恋心を抱いている未来を見て動揺しています。
まったくもって、半年先の未来とは絶妙です。
現在となんの変わりもない人も多いでしょうが、何かが大きく変わるにも十分な年月です。
様々な未来視が描かれ、それぞれがそこに向かって、あるいはそこに向かうまいと奮闘します。
登場人物の一人に、日本人女性ケイコもいます。自ら命を絶たれた女優、竹内結子さんが演じられています。
東大卒のエリートながら、型にはまった生き方を強いられる（SFドラマ『ヒーロー』と同じような、だいぶおかしな日本TOKYOが舞台ですが）女性が、見知らぬアメリカ人男性と恋に落ちる未来をみて、現状を変えようと単身渡米します。
相手の男性もまた、未来視で見たケイコと出会うべく動き出していました。
本筋とは少し外れますが、このドラマが予定通りシリーズ化されていたなら、彼女が今もお元気だった未来もあったのではないかと考えずにはいられません。
それぞれが各々の未来視を念頭に、ついに6か月後の未来その日がやってきます。
未来視の通りに進む人々。そこで初対面ながら、出会う未来を待ち望んでいて、既知の人と再会するかのように喜び合う面々。
逆に望まなかった未来が、見たとおりに起こってしまった人々。
悲喜こもごも。その日を迎えたわけですが。
中にはなんらかの大きな変化により、まったく違う現実を迎える人々もいました。
実はこのブラックアウトは、自然現象などではなくある組織によって仕組まれたことも徐々にわかってきます。
そしてなんと未来視の時刻まもなく、二度目のブラックアウトが起きることが判明します。
そこで再度、人々は次なる未来のフラッシュフォワードを目にします。
主要登場人物たちの未来の映像も、次々と映し出されます。新たな謎の始まりです。
で、続きがない！ここまで来て？
絶叫しますよ。
当初、シーズン5までの構想があったそうですから、ここでクリフハンガーのまま終了したのは悔やまれてなりません。
昨今は打ち切りが決まったドラマを、SNSなどの呼びかけをきっかけに、再開が実現することもあるのですが。残念ながらこの当時そのような風潮はなく。このドラマの続きが出ることは、おそらく永久にないでしょう。
とはいえ、見ごたえは十分のドラマです。世界中の人が、同時に同じ体験をしてつながっていく。近未来に、見知らぬ人との出会いが待っている。想像力が刺激されます。
未完という覚悟をもっていただかなければいけませんが、それをもって多くの人に見ていただきたいと思う作品です。逆にいえば、1シーズンのみですので、さくっと、見てみませんか？
正直、被害者仲間、大募集です。
一緒に理不尽を、体験してみませんか？
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