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Movie:2「マダム・イン・ニューヨーク」(2012)

映画冒頭、主人公シャシが振り返るカットで、その大きなお目めに一瞬でハートを奪われました。
なんてなんてかわいらしい女性でしょう!

インドの伝統的な専業主婦シャシを演じるシュリデヴィ・カプールは、「インドの吉永小百合」的存在なんだとか。
この映画の撮影を終えた時点で49歳だったと知った時には、腰を抜かしそうになりました。
顔立ちはもちろん、表情のすべてが少女のように愛らしいお方です。

さて、お話の内容ですが。カーストはおそらく上位でしょう。裕福な家庭の良妻賢母ながら、伝統的女性にありがちな英語がまったく話せない主人公
エリートの旦那さんと進学校に通う娘は英語を流ちょうに話せます。そんな二人はことあるごとに、妻・母であるシャシが英語を理解できないことを小ばかにしてきます。見ていて本当にむかつきます!
内心おもしろくはないものの、彼女自身そもそも英語に必要性を感じていないため、そんなときは無視をきめこむだけでした。

ある日ニューヨークで暮らす姉マヌから、娘ミーラ(シャシの姪)のインド風結婚式の準備を手伝って欲しいと頼まれます。式には家族全員で参加することになり、シャシは渋りつつ準備のために一足先に単身で渡米することに。
久しぶりに会う姉と、ヒンディ語で会話を楽しむシャシでしたが。
もともと好奇心旺盛な彼女は、一人で街中を散策しカフェへ。ところが英語がわからないため、うまくオーダーができず、イラ立つ店員にひどい扱いを受けてしまいます

これは英語が話せない外国人が、一定期間英語圏内に滞在すると、必ず受ける洗礼といっていいでしょう。私も似たような仕打ちをうけたことがあります。経験のある人は本当に共感する嫌なシーンです。

ところが、そこでめげなかったシャシ!今までのうっぷんもあったのかもしれません。
彼女は目についた英会話スクールの電話番号を覚え、片言の英語でがんばって申し込みをします
そして姉家族にも内緒で、こっそり通い始めるのです。
そこで出会った先生も生徒たちも、一様にユニークでポジティブ。最高の仲間になっていきます。
中でもフランス人シェフのローランは、実はあのカフェで彼女がひどい目にあったときに、その場にいて優しく声をかけてくれた青年でした。そしてローランは、再会したシャシのかわいらしさに恋をしてしまい、リアル王子様(あるいはナイト)と化します。
あんな若いイケメンをとりこにするなんて、アーユルヴェーダの底力強すぎ!もちろん人妻の彼女に一線を画してくれるのですが、その紳士っぷりもめちゃくちゃ素敵なんです~。

遅れて渡米した家族はシャシの語学学校での奮闘ぶりを知らずに、またまた彼女をばかにします。
授業が終わるたびに地下鉄でシャシを送ることが日課となっていたローランに、彼女は「家族だからって何を言ってもいいわけじゃないわ」と感情のままにヒンディ語で愚痴ぐちを吐き出します
「何を言っているかわからないけど、かわいそうに」彼女が傷ついていることは敏感に感じ取り、そうフランス語でつぶやくローラン。もう、優しすぎかっこよすぎ。
これも母国語の違う外国人と仲良くなったときに、あるあるなやりとりなんですけどね。

生徒思いの熱心な先生に恵まれ、仲間たちと実践を重ねるうちに、めきめきと英語力を磨いたシャシ。
しかし幼い息子がけがをしたり、思いがけないハプニングがあったりして、クラスメイトが各々英語でスピーチをする最後の授業に参加できませんでした。
そんな中迎えた結婚式で、もう一人の姪ラーダはシャシにスピーチを促すのです。

実はラーダには、ひょんなことからスクール通いがばれており、それまでも何かと協力を得ていたのでした。彼女は結婚式を機に「おばさんは英語が話せる」ことを皆に知らしめようとしたのです。また最後の授業でするはずだった彼女のスピーチを、披露する場を設けるための心配りでもありました。
しかし何も知らないシャシの夫は驚き(あくまで彼女に恥をかかせまいと)スピーチを変わろうとします。シャシはそんな夫を優しく制止し「May I?(いいかしら?)」と立ち上がります。

インド映画は『踊る~』的な明るさがありますが、そこに必ずカースト差別や女性蔑視の闇が往々にして反映されます。この映画はカースト問題は描かれませんが、「典型的女性」の閉鎖的な世界が色濃く感じられる作品です。
そして英語圏でのノンネイティブ(移民)のリアルも、あらゆる場面にみてとれます。

とはいえ全体的には明るく、ポジティブな作品になっていますので、誰が見ても楽しめるかと。
それにしても、もともと日本で公開予定のなかった作品だというのは驚きです。
私は現在4回ほど鑑賞していますが、毎回鑑賞後に新たなやる気をもらえます。今後も、定期的に鑑賞していくであろう作品の一つです。

ちなみに主演シャシ役のシュリデヴィ氏は、2018年54歳の若さで亡くなられました。
それでもこの作品の中で、いつまでも何度でも、輝き続ける彼女を見ていたいと思っています。


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