10年ほど前から「仏教」に興味をもつようになり、初心者向けの読みやすそうな著書をいくつか手にした中での1冊です。
タイトル通り、とっつきやすい「入門書」になっていて「教養」の幅が広がりました。
「宗教がない」と言われる日本人ですが、やはり文化・生活の中に仏教が根付いていると感じることは多いと思います。
そんな日本人なら聞き覚えのある言葉(「諸行無常」「縁起」など)を挙げて、仏教的背景を紐解いていきます。
17キーワードと銘打たれているだけあって、体系的に「仏教とは何か」が記されているのがよいですね。
「仏教」を本職?とされる方の出版ではなく、この本の著者は宗教学者ですので、少し引いた客観的な目線になっているのも、初心者には理解しやすいでしょう。ご実家は「日蓮宗」だそうですが、執筆される際はあくまで「研究者目線」を意識している旨を前書きで断っておられ、本文も実際に何かに偏るような描写はありません。
加えて一神教(主にキリスト教)と仏教の違いについても、一般的な日本人の宗教観をもとに解説されているのもよいですね。
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』における仏教的世界観についても、かなりのページが割かれています。
一度は読んだことがある方も多いであろう、私も大好きな作品です。
父親が熱心な浄土真宗の信者であったにも関わらず、賢治自身は法華経を信仰していたというのは有名な話。物語は「十字架」や「天国」が出てくる、一見「キリスト教」的な世界観で構成されていますが、実は「仏教」がベースになっているという宗教学者の見解を、聞いたことはありました。
本書の中では具体的事例を挙げて持論を展開されており、大変わかりやすいものです。
中村氏の著書はこの一冊を拝読したのみですが、仏教・キリスト教をはじめとして、あらゆる宗教や、その対比について多くの本を手掛けていらっしゃるとのこと。
その多くが、わかりやすさに定評があるようですので、また機会をみて別の著書も読ませていただきたいと思っています。
本作は「宗教」について学ぶ手始めの一冊としても大変有用だと思います。特に宗教に興味がない方でも、あくまで教養の一環として手にとってはいかがでしょうか?
宮沢賢治ファンの方にも、新たな物語の視点を得られるチャンスでおすすめです!
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