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Book:2「砂の女」(1962)阿部 公房 著

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ある昆虫学者のが迷い込んだ田舎の村。ひょんなことから、そこの砂地にある家で一泊することに。ところが翌日、その砂地から出られないことに気が付くのです。
そうしてその家で村の女性と生活を共にしながら、村人に砂を除去する作業を強いられる謎の監禁状態に陥ります。
当然ながら強く脱出を望む男。しかし次第にその異常な状況に馴染んでいき…

高校生の時、読書家の友人にすすめられて手にした1冊でした。
「とにかく衝撃だから」彼女の言葉通り、読み終えた時のショックはいまだ鮮明です。
人のアイデンティとはこんなにももろいものなのか。
サリン事件で非常に優秀な人々が、いともたやすく洗脳されていたことが不可解だった当時の私は、この本でその答えを垣間見た気がしました。

もちろん私は、この後何冊か著書を読み漁り、どの作品でも「普通」の概念を揺るがされる、その世界観に酔いしれたものです。
作者の阿部公房といえば、数学の天才であり東大医学部に進学するとびぬけた頭脳を有しながら、教授に「医者にならない」約束で卒業を許されたという逸話のある人物です。
そんな筆者の描く狂気の数々。どの作品にも、凡人には思いもよらない危なげな人間心理が見て取れます。

「砂の女」は言わずと知れた氏の代表作で、映画化もされた名作です。氏の作品の中でも、比較的読みやすい一冊ではないでしょうか。
いずれにせよ私にとって阿部公房作品1冊目として、これほどふさわしいものはなかったと思います。
未読の方がうらやましい。ぜひその手に取って、この衝撃に身をゆだねてみてください。

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