BS及び地上波でも放送されていたため、1~2話はご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。シリーズ終了後も、長く愛されているドラマのひとつです。
主人公グレゴリー・ハウスは、名うての診断医。しかし傍若無人な人柄で、ことごとく雇い主と衝突し勤め先を失っていました。そんな彼は、大学時代からの友人であるカディに拾われる形で、彼女が院長を務めるプレインズボロ教育病院で「診断科」を任されることになります。
ハウスはそこで若く優秀な3名の医師を部下に構え、チームを立ち上げます。
物語は基本一話完結。『科捜研の女』に見る科学捜査ドラマに近いテイストです。
ほとんどのエピソードは、患者が突如何らかの病状を発症するシーンから始まります。
そうして病院を訪れた患者の、症状をまずチームで把握。推測される原因を、部下達に思いつく限り挙げさせて、ハウスがホワイトボードにリストアップしていきます。
それをもとに意見を誘導、反論をあげ却下を繰り返し、最も妥当な案を選択。治療法を指示するといった流れです。
その治療は往々にして一時的に効果をあげます(あるいは特に変化なく)が、やがて悪化するのがお約束。再度検討を重ね、隠された新たな原因を探っていくというのがお決まりの展開です。
その際、見落とした要素や珍しい症例を見つけ出すのもそうですが、ハウスの信条”Everybody lies(人は嘘をつく)“に基づき、意図的あるいは無意識に患者が隠している「嘘」を暴いていくのが見どころとなっています。
その過程は「医療ドラマ」というより「推理ドラマ」の様相。
実際に随所で、シャーロック・ホームズへのオマージュが見られます。
主人公のハウスはホームズの位置づけで、同じ病院にいるハウスの親友:ウィルソンがワトソン的な存在です。
このウィルソンは腫瘍学部門部長のポジションにあり、仕事上はハウスのチームとは関係ありませんが、周りに対立したり不評を買ったりするハウスをかばい、ハウスに意見する「良心」として彼を支えます。
ワトソンンをほうふつとさせる「惚れっぽさ」も、物語のキーになっていきます。
ちなみにハウスの居住地は 221B Baker Street とホームズの住所そのままですから、もはや「実は…」でも何でもありませんね。一時的ではありますが、本家同様そこに二人が一緒に住むことにもなります。
面白いのが、ワトソンが負傷兵だったのに対し、本作ではハウス(ホームズ)が右足に病を抱え、歩行に杖が必要なことです。さらにホームズはあくまで探偵であって、医師はワトソンですから、本作では二人とも「医師」であるという点も興味深いですね。
鋭い観察力と幅広い知識がある探偵(ホームズ)的役割ととも、医師(ワトソン)の立場がないまざったハウス。主従関係の見える本家に対して医師同士の二人の関係は、完全なる対等さに裏打ちされた友情が、物語の根幹となっています。
またホームズのコカイン中毒に相当する、ハウスの鎮痛剤バイコディン依存も物語の核となります。何よりハウスには、それ以上に危うい破滅願望を感じさせる言動が多々見られ、それにより物語が展開していくところも特徴です。
右足を引きずっているのに、バイク売り場でじっと物色していると、店員に「右足かい?だったら乗れるよ」と言われ大型バイクを購入。バイク乗りとしては「左足が問題なければ確かに乗れるな…」と納得するのと同時に、「いや、でも乗るなよ!!」と声を大にしたくなるところでした。
ハウスのやることなすことは、前向きに「やれることにチャレンジ!」ではなく、やさぐれ具合満載の成り行きがひしひしと感じられます。
ちなみに病院に訪問した確執のある父親に「身障者用のパーキングに止まっているバイクはお前のか」とあきれられてしまうあたり、彼のそういった突飛な行動は障害によるものでもなく、そもそも彼の本質でもあるのでしょうか。
ハウスは定時帰り死守のため、時に患者をぞんざいにあつかい、診断においてもただの「対象」とみなす姿勢をとります。しかしやはり医師として患者を助けたい気持ちは非常に強く、患者の「死」を忌み嫌います。
そのため、周囲の近しい人の死や、死ぬ可能性のある病に尋常ならざる反応をみせます。
そのことでたびたび問題を大きくし、親友のウィルソンはじめ彼とかかわる同僚や部下たちがあおりを食うはめになります。
ハウスの長身で鋭い眼光は、一部の女性を惹きつけモテなくはありません。しかしハウスは気楽に売春婦と楽しむのが常。恋愛感情はちょいちょい抱くのですが、まあその性格ですから、いろんな意味でこじらせまくりますので、いちいち恋愛に踏み込めないのです。
そんなハウスが満を持して、上司で友人のカディと深い恋愛関係になるのですが、お得意のネガティブさで自らぶち壊しにかかります。
しかし徐々にウィルソンとの関係性には、異常な執着に似た結びつきを見せていきます。
めちゃくちゃなハウスを見捨てない度量を見せつつ、ある出来事から一度は絶縁状態に陥るウィルソン。しかし結局彼を赦し、その後も常に冷静に彼と向き合っていました。
とはいえハウスを受け入れたウィルソンの姿は、もはや共依存か?と思えるレベルになっています。
そんな最終シーズンでウィルソンに不治の病が判明します。当然常軌を逸した行動に走るハウス。
その結末やいかに。
最後は、私としてはこれでこそ!と言いたくなる落としどころでした。
さて皆様はどう感じるでしょうか。
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