891619611

Book:6「世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う」(2019)白石 あづさ 著

皆さんは、インド仏教の頂点に立つのが、日本人僧侶であることをご存じですか?
私はヨガに長年携わるうちに「インド仏教」に興味を抱くようになり、タイトルでこの本を手にしました。そして、かの人物を知るにいたったのです。

私たち日本人(おそらく世界中の人)にとって、インドの偉人と言えばマハトマ・ガンディーでしょう。非暴力・不服従運動により、インド独立のために戦ったその経歴はあまりにも有名です。
しかし実は、彼によってまったく救われなかった人々がいました。不可触民とよばれる、カースト最下層の人々です。ガンジーは国という大局を見ていましたが、国民一人ひとりの「平等」を目指したわけではありませんでした。

そんな最下層の人々のために尽力したのが、アンベードカル博士です。
ガンジーは上位カーストの出でしたが、博士はカースト最下層の家庭から想像を絶する苦難を乗り越え、大学進学を果たした方です。私はこの本を通して初めてこの方の存在を知りました。
博士は身分差別(カースト)の因習を打破する解決策を、発祥の地でありながら長らくすたれていた「インド仏教」にみました。そして1956年、ヒンドゥー教が多くを占めるインドにおいて、約50万人の人々と共に仏教への集団改宗を行うのです。
ところがその2か月後、病のために博士はこの世を去ってしまいます。結局インド仏教は指導者を欠いたまま、暗礁に乗り上げた形になります。

時は流れ1965年高尾山留学僧としてタイに留学したのが、佐々井秀麗上人その人でした。その人生は波乱に満ちたもので、決して「高僧」と呼べるような生き方をしてきたわけではありません。

幼少期より胸に胸に抱く闘志のようなものがありました。同時に、すべての生き物を敬う心がありました。そのうえで女性へ抱く欲望が人一倍強かった彼が、なりゆきのように仏教の道へと足を踏み入れいく数奇な人生。そうして留学まで果たしたタイで、安穏とした生活を送るそこの僧侶たちに疑問を抱きます。やがて彼は導かれるように、紆余曲折を経てインドへと向かうことに。そしてその現状を目にした彼は、ついにアンベードカル博士の遺志を受け継ぐ者となりました。

壮絶なお話を紹介しましたが、この本自体は、インド仏教の最高指導者として、その地位を確立した佐々井上人と、ライターの白石氏ほのぼのとしたやり取りをつづった手記です。
はじめは、このひょうひょうとしたお坊さんは何者?という感じですが、やがて怪僧と呼びたくなるような破天荒ぶりに驚き、それまでたどってきた壮絶な道のりに感服してしまいます。
こんな方がいらしたことを、今まで知らなかった自分を恥じました。

正式な仏教の僧侶としては日本の一部、あるいはインド自体でも受け入れられてはいないお方です。
それでも彼は歩みを止めません。命がけの断食、多くの使徒との大行進。
おそらく外国人だからこそ、カーストという不可侵領域に踏み込めたのではないでしょうか。
テレビ番組「世界ふしぎ発見」でも紹介され、ご覧になった方もいるかもしれません。
私はこの本を手にして、命をかけて遠い地で戦う日本人がいることを、一人でも多くの方に知って欲しいと心から強く思うようになりました。
もし興味を持った方は、ぜひご一読ください!

※さらにご興味を持たれた方は、『破天~インド仏教徒の頂点に立つ日本人~』山際 素男著(2008)で、さらに詳細な上人の生きざまを知ることができますので、併せておすすめいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました