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Series:28「シェイムレス 俺たちに恥はない」season1(2011)-10(2021)

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よくよくアメリカの海外ドラマといえば、中流階級以上の人々が主演の物語がほとんどではないでしょうか。
日本人が憧れるような家や車、高学歴だったり憧れの職業に就いていたりする登場人物。セレブが主人公の設定も少なくないですよね。
ある程度経済的に厳しい状況下だったとしても、むしろそれはその後の成功への伏線。それだって家賃を滞納するレベルですらない。
そんな大多数のドラマに比べると、この「シェイムレス」はなかなか異色かもしれません。

舞台はシカゴのサウスサイド強盗、暴行、銃器関連の犯罪が横行し、ギャングの活動が活発な地域です。物語の要となるのは、そこで暮らすギャラガー一家スラム街の貧困家庭です。
アルコール依存症でジャンキーの父親、失踪中の母親。
6人の子どもたちは、上の子がヤングケアラーとなって下の子を育てる。
アメリカの労働者階級にあたる彼らですが、移民でもない白人というのも特徴的でしょう。
幼い兄弟もアルバイトや小銭稼ぎをして、全員が働き詰めでも常に生活は苦しく、家族のほとんどは犯罪に手を染めることになります。しかしいわゆる「ファミリービジネス」的な派手なクライム系ではなく、寸借詐欺やドラックディーラーの受け子的なしょぼい違法行為です。

とはいえ定期的に誰かが、この生活を脱却しようと前向きに努力を試みます。しかしアメリカの肉体労働者のリアルなのでしょうか。結局目先の問題に追われて、生きるのに必死で挫折します。
しかしいわゆる「社会派ドラマ」ではありません。というのも、彼らに悲壮感がまったくないからです。
一言で言えば、たくましい。タイトル通り恥知らずシェイムレスに生きる、実にしぶとい一家なのです。

ネットフリックスの人気ドラマだったので視聴したのですが、始めはまったく彼らに共感できず好感ももてませんでした
究極の怠け者である父親フランクは、いかに働かず享楽的に生きるかに全力を注ぐ、給付金詐欺師なのでいわずもがな。
親代わりとなって懸命に弟妹達を育てる長女フィオナなど、一見応援したくなる健気な人物かと思いきや。その融通の利かなさで時に横暴さが目立ち、男関係で躓いては周りを巻き込み、行き詰ると被害者ぶる。モデル体型の美女なのに、残念な愛されないキャラだったりします。
フィオナの右腕となる長男のフィリップ(略称リップ)も、ずば抜けた天才的頭脳をもちながら、それを無駄にする刹那的な性格が歯がゆい。
シーズン1ではまだ幼くかわいらしい次男イアン・次女デビー・三男カールも、ネグレクトの環境下で(フィオナが目配り気配りしてはいますが)、順調に問題児へと成長します。
唯一の癒しは末っ子のリアムです。まだ乳飲み子の彼は、一挙手一投足がすべてかわいらしいので、兄弟たちも基本メロメロです。しかしなぜか一人だけ黒人の赤ちゃんなので、おそらく多くの視聴者は混乱します。しかし間違いなく白人である両親の血を引いている(先祖返り的な?)、まごうかたなきギャラガー家の一員であることが、物語の中で証明されます。

そんな子どもたちが切ないのが、失踪していた母親モニカが現れた時です。
彼らを心から愛しているモニカですが、双極性障害を患っているため常に不安定。自分自身に精いっぱいで、彼らに寄り添うことができません。
しかし子どもたちは所詮母親が恋しい。成人しているフィオナですら、憎み切れず幾度となく振り回されることになります。常にいるけど役に立たず、子どもたちにゴミ扱いされるフランクよりたちが悪い。

ほかに特に見たいものがない時期で、配信がシーズン5までだったので、とりあえず流し見し続けたのですが。6以降はわざわざ見るまでもないかなあと思っておりました。
ところが、ネットフリックスで残りシーズン6~11が配信になると「待ってました!」と感じる自分がいたのです。同時期に、それこそずっと待っていた『アウトランダー』の新シーズンが配信されていたのに、それよりこっちが気になって仕方ない。
とりあえず先に「シェイムレス」シーズン6を見るか…からの最終シーズン11まで一気見いたしました。我知らずギャラガー中毒になっていたようです。
おそらくシーズン1~5を見た時には、それまで見てきた海外ドラマとの乖離かいりぶりに、評価が追い付かなかったんですよね。では一体何に魅了されてしまったのか。

改めて後半は「楽しみ」に視聴しましたので、登場人物への愛着がバシバシ深まっていきました。そもそもフィオナ以外は、みんなティーンエイジャーでしたから。その成長と共に初めての彼氏や彼女ができる過程も盛り込まれてきます。
しかしかわいらしい初恋のそれではなく、それぞれの貞操観念ゼロの初体験から、ドロドロの破局までが赤裸々に描かれます。
そもそも家族全員の恋愛事情が筒抜けで、家にそれぞれの恋人が入り浸って(気が付けば住んで)いても誰も気にしません。家族のいる家の中でことに及んでいるのも、お互いスルーです。

大家族のお約束洗面所(シャワート+イレが一カ所のみ)の取り合い」にも、入れ代わり立ち代わりする居候が参戦するのが日常。イントロではその洗面でのそれぞれの姿(用を足すところからセックス真っ最中まで)が流され、このドラマの世界観が見て取れます。

ギャラガー家の日常は、しょっちゅう誰かがでお尻丸出し、卑猥なスラングが飛び交い、まあお下品極まりない。
しかし段々そのカラーに馴染んでくると、テンポのいいかけあいに引き込まれ、臨場感バキバキでそれぞれの行く末が気になります。

さらにギャラガー家の隣人カップルヴェロニカスティーヴが最高。
ヴェロニカフィオナの親友で、看護助手の経験があるせいか非常に世話焼き。フィオナの良き相談相手となるだけでなく、何かとギャラガー家の手助けをします。
しかし聖女ではまったくなく。きわどい服でダイナマイトバディを披露し、というかしょっちゅう一糸まとわぬ姿で視聴者サービスに余念がなく、自身のエロサイトで稼いでもいたツワモノです。

スティーヴはキュートでマッチョな大男ですが、少々おバカさん。大好きなヴェロニカの尻に敷かれて言いなりです。子どもが欲しいけれどできないヴェロニカに、彼女の母親との性交渉を強制させられる、その鬼畜ぶりにすら逆らえない。
とにかくこのカップル、倫理観ゼロです。

さらに二人の営むバーアリバイ・ルームで働くロシア人娼婦スヴェトラーナが、性悪なビッチぶりをいかんなく発揮。ヴェロニカとスティーヴ、そしてこの『アリバイ・ルーム』そのものを引っ掻き回していくのも見ものです。
とはいえフランクが「ツケ」で飲んだくれることができるこのバーは、似たような価値観のブルーカラーが集い。退廃的な場末感とともに、意外にもアットホームな空間を生み出しているあたりなど、このドラマの魔法でしょう。

物語が進むにつれ、兄弟たちは様々な試練に立ち向かい変貌を遂げていきます
フィオナダメ男との恋愛や、ビジネスとの向き合い方を模索するうち、兄弟に身をささげてきた半生を顧み始めます。
リップはモテるものの破滅的な恋愛を繰り返し、大学進学を果たしたにも関わらず人生行き当たりばったり。しかし挫折を経て、徐々に大人の責任を身に付け始めます。
イアンゲイであることに葛藤し、母親譲りの双極性障害に苦しみます。それでも家族や恋人の支えで、自分らしい生き方に向かって歩み始めます。
デビーは父フランクに「フィオナは目端が利いて美人だが、お前は(美貌も才能も)何もな」と言い切られる少々残念な女の子。しかし自分の欲望にどん欲で誰よりも行動力を発揮。したたかでセクシーな女性へと成長していきます。
一番振れ幅が大きかったのはカールでしょう。これはドラマを見て確認いただきたい。
みんなのアイドルリアムも、物心がついてくると唯一「黒人」である自身のアイデンティティに悩みます。しかし苦悩の末それを乗り越え「自分はギャラガーだ」と納得。リップばりの天才児であることも徐々に明らかになります。

シーズン後半になるにつれ、なぜか子どもたち以上に父フランクが物語の中心となって主役の様相を呈していきます。一人なんら成長を遂げないというのに。
ところが逆に、その何があっても変わらない姿こそが魅力となっていくのです。

フランクの見てくれははっきり言って小汚いじじいです。何度も家を追い出されて(あるいは自ら出て)ホームレスと化しますし、ホームレスではない時でも、日中ナチュラルに物乞い詐欺を働いています。
そんなホームレス然の見た目ながら、フランクは狙った女性と片っ端から関係をもっていくのですす。というのも、子どもたちの母親モニカをはじめ、メンヘラキラーの彼はその扱いもお手の物。そもそも惹かれる女性も基本やば目で、ダーティな刺激を求める人妻との火遊びから、メンヘラ美女とのアブノーマルなお付き合いまで、女性に不自由をしないのです。

しかも実は優秀な大学を中退していたフランク。時々本気を出すと、たぐいまれなるビジネスセンスを見せたりもします。ホームレス集団の中でリーダーシップを発揮して、手腕を振るったりもしまう。リップやリアムの頭脳は、実は父譲りだったのですね。
しかしフランクはあくせく働いて成功する気は毛頭ありません。そんな端から見ると負け犬のような人生を送っりながら「好きに生きてきたから、なんの悔いもない」と断言します。
段々と、その生き様をあっぱれ!と思ってしまう自分に震撼します。あなたもそうなったなら、もうギャラガーホリックの一員でしょう。

バラエティ豊かなキャラクターぞろいながら、まったくサクセスストーリーではないこのドラマ。最終回も賛否両論です。しかし私は、「ギャラガーよ永遠に!」的な、実にこのドラマらしい終焉だったと思っています。
あなたも今日からぜひ、チーム・ギャラガーに仲間入りしてみませんか?

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