エドガー・アラン・ポーといえば、推理小説の開祖と言われる人物です。
鋭い洞察力で未解決事件の謎解きをする友人の様子を、「語り手」が描写する『モルグ街の殺人』。
半世紀後に刊行されたコナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ』シリーズでは、同様の手法でワトソン博士が語り手を担い、このジャンルを強固なものとしました。
かの江戸川乱歩のペンネームの由来としても有名ですね。
ほかにも多くの作家に強い影響を与えたポー。彼がいなければ、現在この世に「推理小説」の形態はなかったであろうと言わしめる存在です。
詩や散文も高く評価されていますが、さらに数多く執筆された「ゴシック小説」では、大衆の好みを反映させつつ耽美的でダークな世界観が読者を魅了してきました。『アッシャー家の崩壊』などが代表的ですね。
そして紹介したいのはというと、超有名短編小説「黒猫」です。
私は、伏線がガシガシ回収されていくミステリーは大好きなのですが、いわゆる「探偵もの」があまり得意でなく(回りくどい「演繹法」が駆使されるシステムが疲れる)、より物語性の高い作品に魅力を感じます。
よってポー作品は、虚実の境が薄い、その現実離れした世界観こそ醍醐味、と思っている一人です。
そんな観点から挙げたこの作品は、ある男の独白から始まります。
自身を、かつては動物を愛する心優しい人物だったと語る彼。
それが酒という悪魔によって、残忍な動物殺しに堕落したというのです。
美しい黒猫の「プルートー(冥界の神)」を特別愛していたのに、自らの手によってその片目を奪い、最後は首をつって殺してしまう。
その名にもあるように、黒猫=魔女の何かしら不吉な存在であることをほのめかし、己の罪はまるで他人事のよう。
そんな彼のもとに、プルートーそっくりの黒猫が現れると、さすがに自責の念を掘り起こされ、次第に狂気を呼び起こされていきます。
ポー自身が酒乱で、仕事や恋人を失う羽目に陥っています。
酒を愛する文豪ではなく、酒におぼれた才気から漏れ出た本音でしょうか。
とても短い作品です。
まだ読んだことのない方は、青空文庫(著作権が消滅した作品や著者が許諾した作品を、電子書籍として無料公開)でも読むことができますので、まず目を通してみてください。
あらゆる物語の原点をそこにいることができますよ!
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