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Book:39「「空腹」が人を健康にする」(2012)南雲 吉則 著

著名な医家の出で、ご自身も医学博士でいらっしゃる南雲医師
40代半ば、仕事のストレスのため体重が15kgも増加したそうです。
メタボリック体型となり、実年齢より老けて見られる上に体調は悪化。命の危険すら感じ、あらゆる減量方法を試した結果、たどり着いたのが一日一食というやり方だったとのこと。

その方法により、ダイエットに成功しただけではなく、健康はもちろん、若々しい見た目を手に入れることもできたというのです。

その後はコメンテーターなど、テレビでもご活躍しておられますので、皆様もご覧になったことがあるのではないでしょうか。私も10年ほど前、あるバラエティ番組で南雲先生を拝見して、そのお話に興味をもち何冊か著書を読ませていただきました。
その中で、個人的に一番わかりやすかったのが本書になります。

先に私見を述べさせていただきたいのですが。
この手の「健康法」を知識として取り入れる際には、大前提として、日進月歩の医療(科学全般)によって変容していく(効果がない、いっそ体に悪い、といった方向に転じる)可能性があることを、常に念頭におくべきだと思います。その上で自身が納得して、生活に取り入れるのは大変結構なことです。しかしその情報の動向は常に意識し、アップデートしていくことが肝要でしょう。
さて本書の内容ですが。

南雲先生は、当然医学の知識が豊富におありなので、減量を始めるにあたり、まずは王道のカロリー計算を取り入れられたそうです。しかし楽しくないし続かない
ダイエットの原則は続けることですから、無理は禁物です。

試行錯誤を重ねて、ご本人に定着したのが一汁一菜」で野菜たっぷり、お肉控えめのお食事だったとのこと。
はじめはお肉が恋しくなったものの、やがて口にしてもおいしいと感じなくなったそうです。またこの食生活でひどかった便秘が解消され、さらに体臭がなくなったのだとか。

肉断ちして菜食食主義にならなきゃいけない、ということではありません。
ですが具沢山のお味噌汁や、旬野菜を煮びたしたおかずなど、日本人ならお好きな方は多いでしょう。お肉も毎日ステーキが食べたい方は少ないでしょうし、特に日本人はお魚の美味しさもよく知っていますよね。
どんなに体によくても、食べたくもないものを無利して食べ続けるのでは長く続きません。
しかし体に必要なもの=自分が欲するものであれば、心身ともにいいこと尽くしのはずです。

南雲先生はここで、無理なく体の声に沿った生き方ができるようになった過程と、その方法を伝えられています。
そのためにもまず大事なのは、タイトルでもあげられている通り空腹」の時間を作ることなんだそうです。それによって長生き遺伝子であるサーチュイン遺伝子が活発化するのだと。

当時何かと話題になっていたこの「サーチュイン遺伝子」について、かなり丁寧な説明がされているところも、本書のおすすめポイントです。

飢餓に備えて進化した人類の体は、飽食により体の機能に異変が起きているとも言えます。
それを整えることで、血管皮膚が若返り美しい見た目にも。
そう、健康はそのまま外見にあらわれるのです。

また、本書の中で私がもっとも感銘を受けたのは完全栄養食という考え方でした。
健康によいのはバランスの良い食事。しかし栄養学に基づいた、きちんとした食事内容を毎回考えるのは、とてつもなく大変なこと。
そこで簡単に栄養のバランスが整うのが、先生の提唱する丸ごと食です。
皆さんは「卵は完全栄養食だ」と聞いたことはありませんか?
いわゆる5大栄養素がすべて含まれている食品という意味です。
しかし先生が言うには、すべての食材は摂り方次第で完全栄養食になるというのです。

その方法が魚なら「頭から骨、しっぽまで」、野菜なら「皮やヘタなど捨てるところも全部」
そう何でも「丸ごと」食することです。
だからマグロトロだけなんて食べ方だと栄養素は偏りますが、小魚をバリバリ一尾食べることで、そこに必要な栄養素はすべて備わっているのです。

好きなものを好きな部位だけ、たまに食べる分には問題ないけれど、いつもそうだと栄養も偏ってしまう。
当たり前といえば当たり前ですが、改めて考え直させられる見方でした。
確かにお肉なんて、そのもととなる動物丸々全部(骨や皮や内臓まで)食べるのはまず無理ですもんね。
野生の動物、例えば肉食動物を見てみれば。狩りをした獲物の大部分を食しますよね。「肉食」と聞けば一見栄養が偏りそうですが、言ってみれば丸ごと食を実践していますから、理にかなっているのかもしれません。

さらに食べるタイミングとして南雲先生が辿り着いたのが、冒頭でお話した一日一食一日の食事を夕食のみにするというスタイルです。

朝食は大抵大事だと言われますが、医療関係者でも抜く方が良いという方も一定数いらっしゃいます。また昼食は確実に眠気を誘いますから、精鋭のビジネスマンたちは抜くことで効率化を図っているとも聞きます。
朝昼の食事の準備や、食事時間そのものを、まるっと無くすタイパの面でも、一日一食は非常に有用でしょう。

南雲先生も、昼食後のパフォーマンス低下(眠くなる、集中が途切れがちになる)に気づいたことから、仕事中ずっと空腹の状態を維持することにしたようです。

職場にも1人「そのほうが楽だから」と夕食しか召し上がらないという男性(昼休みはお昼寝されてます)がいるのですが。スリムなのはもちろん、いつもパワフルで体調不良とは無縁です。

またヨギーが一目置く片岡鶴太郎氏などは、朝食のみで生活されているお方です。一日一食を実践する方は、夕食のみであれば私の職場しかり、それほど珍しくないかもしれません。しかしそれを朝食で行える方はかなり稀でしょう。

ですが片岡氏は、そのやり方が合っていて、我慢や節制をしているわけではない、というところが重要だと思います。

実は私個人的には、「一日一食」をあまりよい健康法だと感じません(南雲先生も万人にはすすめていません)。おそらく「一日を一食」は、一度やめて三食に戻すと、太りやすくなるはずです。そのため一定期間行うダイエットとしてはよろしくないでしょう。
そもそも、私自身は自分に合っていないと考えます。

私は、朝ご飯をしっかり食べてから一日を始めたい。ランチは楽しみだし、夜はゆったり晩酌したい。というわけで、今のところ私が実践することはありません。

しかしこの一日一食が、一生続けられるくらいに生活サイクルが整えられたり、自身のリズムに合うならば最高だろうな、とは思っています。

完全栄養食しかり、そのほか睡眠の大切さなどにも言及されている本書は、生活リズムが狂いがちな現代人に「気づき」をもたらすヒントがたくさん詰まっています。
何か一つでも、自身の生活をかえりみる一手になる、そんな意味で実に有効な著書として多くの方にすすめたい一冊なのです。

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