韓国ドラマが一世を風靡し、韓流ブームは今や世界を席巻。国策として力を入れた韓国映画は2000年頃から、日本でもヒット作が多く出ました。
正直、私はそこまで興味はなくて…。旅行で訪れたのも20年以上前に一度きり(苦手だったキムチが、本場で想像の700倍おいしくて、その後大好物になるくらいの影響を受けましたが)です。
とはいえ韓国の(あらゆる)実力がじわじわ周知された頃、この映画のCMが衝撃的で「これはぜひ見なければ!」と思い立ちました。
その内容は、韓国経済発展の象徴としても有名な河川:漢江から「何か」が現れ、河川敷の人間を次々と捕食。そして皆が必死で逃げ惑う中、最後に女学生が一瞬見切れる怪物にさらわれる、というものでした。短時間で見たものを震え上がらせる、いいCMでしたね。
特撮モノとしては、ものすごく精度が高いとは言い切れないかもしれません。
実際視聴に際し「怪物(韓国語でグエムル)」の姿が現れた時には、「まあこんなもんか」と思いました。
しかしその登場のさせ方などが非常にうまく、見た目のグロさだけでなく、怪物たりえる動きやら性質の「いやらしさ」というか「ねちっこさ」がリアル。
スピルバーグ監督『宇宙戦争』で、トム・クルーズたちが宇宙人に見つからないように少しずつ移動しながら隠れる、緊迫のシーンがあるのですが。怪物の巣からの脱出を試みるところが、それをほうほうふつとさせる切迫感に充ちていました。
主人公は、奥さんに先立たれたダメお父ちゃんカンドゥ。
しっかりものの娘ヒョンソとの、何気ない日常から物語は始まります。
最近では『パラサイト 半地下の家族』でも、奥さんに頭のあがらない父親役をされていましたが、それとはまた違ったコメディ色の強い「しょうがないなあ」という種類のダメっぷりです。
そのため父娘の関係性は、微笑ましいもの。
ソヒョンの祖父や叔父・叔母もこぞって彼女をいつくしみ、パク一家は「貧しいながら楽しい我が家」の様相を呈しています。
そんなソヒョンが、先に挙げたように突如として怪物にさらわれてしまうのです。
彼女は死んだものとして葬儀が執り行われ、パク一家は怪物のウイルス感染者として隔離されることに。
そんな打ちひしがれるカンドゥの携帯に、なんとソヒョンから着信が。
その生存を確信したカンドゥは、わが子を救うため病院を抜け出します。
特別な能力があるわけでも、戦う武器や道具があるわけでもない。
それでも命がけで娘の救出に向かうカンドゥ。
怪物誕生の発端ともなった在韓米軍に、捕らえられてても、決してあきらめません。
しかし元来が抜けている彼は、うっかりミスから家族を危険にさらすなど、ところどころ滑稽な様子も描かれます。
それでもそこにあるのは、強い父親の愛情のみ。
ゴジラ同様、化学兵器が生み出した怪物。そこには監督の反米感情も反映されているとか。
そんな社会風刺の要素もありながら、ホラーとユーモア、間の抜けたカンドゥと実はアーチェリーの名手の妹(叔母)、ふてくされた孤児の少年と勇敢なソヒョン。
緩急が素晴らしいヒューマンドラマに仕上げられています。
勧善懲悪でもない。怪物が現れても人は日常を生きる。
おそらく想像と違う結末に、見終えた後あなたは何を思うでしょうか。
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