Day66:「ゴルフがある幸せ。」夏坂 健 著(2004)

ゴルフといえば「(実際にプレーを)やる」、あるいは「(テレビ等で)見る」もの。
そんな日本において、夏坂氏は「読むゴルフ」という新たなジャンルを切り開かれました。
もとは特派員記者で、雑誌編集長まで勤め上げられたお方なのですが、趣味が高じてゴルフライターへ転身されたとのこと。
「地球ゴルフ倶楽部」なる愛好会を立ち上げ、世界中のグリーンを席巻。特に本場スコットランドのコースへの造詣が深い。
豊富な知識をもとにした記事は、軽妙な語り口かつゴルフ愛に満ちており、各界のゴルフ愛好家からの定評があります。

本書は、2000年に65歳で著者が亡くなられた後に、生前の雑誌掲載分から抜粋した記事をまとめたものになります。
帯に「ゴルフ前夜に読みたい34の物語」と書かれてある通り、まったくゴルフに知見のない方よりは、長年ゴルフに取りかれて、もとい親しんでいらっしゃるゴルファー向けと言ってよいでしょう。
ゴルフの指南書ではなく、小話を集めたものですので、ゴルフをされない方でも楽しめるかとは存じますが、基本は「ゴルフバカ」仕様とお見知りおきください。

かくいうゴルフバカ(せいぜい月一ゴルファーではありますが)の一人である私自身、ほうほうとうならされる逸話が随所にありました。
ゴルフというゲームが生まれた背景。世界中に広まった経緯。有名コースの歴史と美しさ。
何より、ゴルフに翻弄される多くのゴルファーたちの悲喜こもごも。
ある精神科医の話として、患者に「ゴルフをするか」を問い、していると答えれば「すぐやめなさい」、していないと答えれば「すぐ始めなさい」と言った、というエピソードがありましたが。
いやはや真理です。ゴルフほど愛に背き、愛に応えるスポーツはないでしょう。

またゴルフをする人間なら誰でも知っていることでも、改めて胸に刺さる言葉の引用も多いです。
「自分の有利に振る舞わない」
「あるがままにプレーする」
大前提、大原則です。そこにのっとっていれば、本来ルールなどいらないくらいです。
実際に、ルールの基礎を立ち上げる際「ゴルフは自分のプレーを自分で審判するゲーム、ゆえに各自の良心を信じて、ルールは最小限にとどめたい」という理念だったとか。
おっしゃる通りです。
ラウンドメンバーによっては、時に互いになあなあになり、特に自分に甘かったことも…猛省。

プロ・アマ様々なゴルファーが紹介されますが、歴史的女子アマ選手「ジョイス・ウェザード」について、私は恥ずかしながら本書を通して知りました。
その集中力のすさまじさとして、パッティングの最中に汽車の騒音が鳴り響いても気が付かずプレーを続けた、という女史のお話が収められています。
私は時々プロツアーの観戦に行くのですが、ほんの小さな物音や風にピリピリする選手を見るたび、彼女のことを思い出します。(けっして非難しているわけではなく、それこそがプロの真剣みであり繊細さでもあるとは思うのですが)

余談ですが…同世代のレジェンド不動裕理ふどうゆうり選手は、雑音等気にせずプレーが非常に速いことで有名だそうです。ともすれば大スター宮里藍みやざとあい選手の陰に隠れがちだった彼女。トラブルでも競技委員を呼ばないほど、細かなルールにもお詳しいという話も。
そんな彼女のゴルフに対する真摯な姿勢は、どことなく女史と重なります。
ちなみに本日開催中の開幕戦ツアーにも、最年長(48歳)選手として(永久シードをお持ちなので)出場しておられますね。すごい。

それから本書を手にするにあたって、女性ゴルファーの皆様に前もって断っておきますと。
女性蔑視とも感じる表現やお話も、少なからずございます。
特にジョークはムッとするものも。
まあしかしそれは、長く「紳士の」スポーツであったので仕方がない部分です。
なにぶん本書も20世紀に書かれた内容ですので。
余裕をみせながら「おほほ、はしたない」くらいで大目に見てあげましょう。

準備は明かりと(必要があれば)メガネだけ。
夏坂カントリーでのラウンドを存分にお楽しみください!

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