今回は漫画を一作品ご紹介させてください。
高橋留美子氏といえば、長年にわたる少年漫画界の大御所。作品は軒並みアニメ化され、オタクならずとも日本人なら誰もが知る著名人のお一人でしょう。
「めぞん一刻」は青年漫画雑誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」で掲載されていたものです。
恐ろしいことに彼女は、同時並行で『うる星やつら』を「週刊少年サンデー」で連載していました。
2つのまったくテイストの異なる名作を同時に手掛けていただけでも正気の沙汰とは思えないのに、さらに驚くべきは、彼女が当時20代だったということです。
もはや人間のなせる業ではありません。
アニメ『うる星やつら』が放映された当時、私は幼稚園生でした。
人気を博しながら、風紀的に社会問題ともなったこのアニメ。私はこのアニメが大好きな、大勢の子どもの一人でした。
そんな幼い時分に、どう考えても同じ絵のアニメ『めぞん一刻』も放映されていました。
目にした当初、「これもラムちゃん⁉」と大喜び。ところが実際に見てみると、大人向け内容で面白くない!と、大変ご立腹したものです。
そして小学校高学年になったある日。友人の家で、お兄さんの漫画雑誌を手にしたとき、たまたま『めぞん一刻』の最終回を目にしました。
やはり当時の私には、まだまだ早かったのですが、あれ面白いのかも?とその魅力には、ふんわり気づいた瞬間でもありました。
中高生時代はとにかく多読乱読で、「物語」は小説・漫画ジャンル問わず読み漁っていたものですが。
その一環で、なんとな~く読み始めた『うる星やつら』。一気に全巻制覇。
幼い頃のアニメのイメージとはまた違った、意外に大人向けの既知とシャレに満ちたハイセンスぶりに、それは魅了されたものです。
その延長で「めぞん一刻」にも着手。大人の恋愛ものでありながら、ギャグ要素満載のその内容にただただ脱帽。なんなら平伏、全面降伏しました。
繰り返しますが、それらを同時期に20代で仕上げたんですよ。
そりゃあアインシュタインやニュートンはじめとする科学者が、後世に残る偉業を成し遂げたのが「奇跡の1年」的な短期間だったり、非常に若い時期だったり。
滝廉太郎のように僅か23年の生涯で歴史に名を遺す名曲を生み出したり、モーツアルトのように通常一生で作り出せるはずがない数の作曲をしてみたり。
世にいう「天才」は期間も年齢も関係ないのは承知の上ですが。凄すぎます。
ちなみに高校時代、読書感想文で全国2位、のちに高校で国語教諭となった友人に「めぞん一刻」全巻、ゴリ押しして読ませたところ「これ、『読書』だよね?」と言わしめたことを付け加えておきます。
物語の主人公:五代裕作は、それは冴えない浪人生。
そんな彼の住むボロアパート「一刻館」に、管理人としてやって来たのは若く魅力的な未亡人:音無響子でした。
彼女に一目ぼれしたものの、二人はどう見ても「月とスッポン」。
はじめは相手にされるはずもなく、周り中にいじり倒されるだけでした。
そのダメっぷりは一見『うる星やつら』の「諸星あたる」に通じなくもないですが。
超人レベルで飄々とした、時に人間離れした能力を発揮するあたると異なり、祐作は心底ヘタレです。
浪人生としてスタートした彼は、辛くも三流私大に合格するものの、その後就職活動でも紆余曲折。
一刻館の妖怪:四谷さんに「君ほど毎年正念場を迎えている人間はいない」と言われる始末。
しかし何と言いますか。
地べたを這うように彼は成長していきます。
その原動力はもちろん響子さん。
とはいえ彼女もなかなかのクセモノ。
真面目な性格ゆえに非常に頑固で。一見パーフェクト美女でありながら、意外と勘が鈍く。そのくせ嫉妬深くて、祐作の心をもてあそぶ結果に。
しかしそれは、生涯の愛を誓った相手を失った傷がもたらすもの。
笑って泣けるとはまさにこのこと。
二人の恋の行方はもちろん、彼らを取り巻くぶっとんだキャラクターたちも、それぞれいい人生観してます。
手塚治虫や宮崎駿のような巨匠たちとはまた違う、若き才能。しかし若さゆえのほとばしる躍動感…でもないなあ。青臭くもない。
20代だと思えば思うほど、老成しすぎた世界観にも見える…でも完成されていない。
なんなら『らんま1/2』以降は、「少年漫画」として完成されすぎているように感じます。
『人魚の森』シリーズの怖さ、『るーみっくワールド』のおかしみ、『1ポンドの福音』のシリアスとギャグの融合は、大人が読むに十分値しますが。
しかしやはり、「めぞん一刻」と『うる星やつら』のもつパワーは別格です。
『うる星やつら』は高橋氏が大学在学中に連載が始まっただけあり、初期の絵は荒く、ストーリーも混とんとしていますが。そんな1話目に持ち出された「鬼ごっこ」が、絵のタッチもかなり完成された最終話に再度持ち出されたときは、すべて計算か?と感激に打ち震えました。
そのうえで五代君と響子さんの、あるべきところへ至る確かな手ごたえ。
どちらも最終回へ向かって、神がかった状態だったとしか思えません。
表題は1作ですが、とにかくこの2作は私の中でセットで、圧倒的な「物語の力」を見せつけてきます。
いやもうとにかく、すべての日本国民に、どちらも全話読んでいただきたい。
ただそれだけですね。
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