これぞB級!なSF映画です。もはやSFとも呼べないかもしれません。
暇な学生時代に一瞬、B級ホラーにはまった時期がありました。もちろんびっくりするくらい「時間の無駄な」駄作もありましたが、そこそこ楽しめるもの少なからずありました。とはいえ、部分的には秀逸な箇所があっても、トータルで見ると穴だらけ~というのがB級のB級たるゆえん。最終的には、やはり同じ時間をかけるなら良質なものがみたいわぁ…という結論に至りました。しかし社会人になってからも、「絶対くだらない」と思いながら、たまにB級映画を手にしたくなるのはなぜでしょう。まあ意図的か失敗か、こちらの固定概念を打ち壊す手法がぶち込まれることも多く、なんといっても幅は広がりますよね。というわけで今回ご紹介するこの映画も、あくまでそういう位置づけの代物だという前提でお願いします。
舞台はイタリア。中国語通訳のガイアのもとには、破格の報酬で緊急の通訳依頼が舞い込みました。しかし仕事内容は機密とされ、目隠しをされて厳重に警備された地下室に連れていかれます。そこにいたのは、見るからに「宇宙人」の姿かたちの宇宙人。驚いた彼女は後悔しますが、流ちょうな中国語で自らを王さんと名乗るその宇宙人は、物腰が柔らかく友好的。ガイアは徐々に警戒を緩めていきます。
地球で最も話されている言語が「中国語」なので、それを地球で話す言葉として選択したという宇宙人。それなのに、中国語圏外のヨーロッパにいるという設定。その切り口は単純に面白い。宇宙人と白人女性が中国語でやりとりする様は実にシュールです。
しかし、複雑な中国語を完璧にマスターできる科学力だか知力があるのなら、一番「有用な」語学が何か、どう考えてもわかるでしょう。まあ、ほとんどの映画で、宇宙人が繰り出す地球の言葉が「英語」であることへの、英語圏以外の製作サイドの揶揄かシャレなのでしょうが。
地球に来たのは「侵略」のためだろう、と決めつけて執拗に尋問する警察。その場で通訳をしていたガイアは、彼らの横暴で非人道的(?)なやり方に反発を覚え、か弱く怯える王さんに肩入れしていきます。はたして王さんの目的とは…。
やりとりは特にひねりもなく、その後のクライマックスもただただ冗長で「時間を引き延ばしている?」と思うほどです。中国語を選んだことで、すわ中国人への嘲笑か、とうがった見方もできます。しかし、ただただ「エンターテインメント」として楽しんでみてください。昨今の映画作りといえば「売れる」ために、とりあえず鑑賞者数を確保できる「過去のヒット作」の続編やスピンオフに頼りまくるわ、なんならAIのデータベースで脚本をヒットする可能性の高い結末にもっていく始末です。コンプラもうるさいし、完成度が高くてもどこかに既視感と閉塞感が漂っています。そんな中、こういう映画は原点回帰かもしれません。そんな目線で、あなたも王さんと遭遇してみませんか。
Day52:「宇宙人王さんとの遭遇」(2011)

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