Day31:「「ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学」本川 達雄 著(1992)

思い起こせば高校生の時(30数年前)、朝礼で校長先生が紹介してくれたのがこの本です。著書の中の「島の規則」に触れられていました。
隔離された島の中では、ゾウのように大きな動物は次第に小さくなり、ネズミのような小型生物は大きな個体へ進化するというものです。

へぇ、そうなんだ~と感心はしたものの。実際にこの本を手にしたのは、それから20年近く後のことでした。
いかにロングベストセラーであったか、お分かりいただけるかと。

著者は東京大学理学部卒、現在は東京工業大学名誉教授という肩書のお方。
受験生のバイブル『チャート式生物学I・Ⅱ』の執筆にも携わっておられる、由緒正しき動物生理学者です。
が同時に「歌う生物学者」の異名をもつ、シンガーソングライターの一面もお持ちだとか。

そんな方の著書ですから、全体的に(高校生に教えているように)優しく砕けた文体になっており、大変わかりやすい内容となっています。

動物は一般的に大きいほど長生きします。
ただし「時間は体重の1/4乗に比例する」ことが前書きで述べられています。体重が16倍のものであれば、成長に2倍時間かかるという計算です。
体重が2倍なら時間も2倍だとすると、ゾウとネズミの寿命が大変な差になってしまいますが、なるほど累乗の差異であれば、実際の寿命差と合致しますね。

サイズによって生きる長さの違う動物たち。
ところが一生の間に心臓が打つ総数や、体重あたりの総エネルギー使用量など、サイズによらず同じようなのです。それによって何が起こるのか。

どうやら物理的な寿命の年月にかかわらず、彼らの感じる「一生の時間」は、どうも変わらないようなのです。
一回の鼓動、一回の呼吸。
それによって時間が認識されるとするならば。


本書はそんなサイズの違いをもとに、動物の運動(走る・泳ぐ・飛ぶ)の効率性、合理的な体の構造について、論理的に考察していくのです。
冒頭の「小さくなるゾウ」と「大きくなるネズミ」の謎も、そこで紐解かれていきます。
日進月歩の科学の世界ですが、どちらかというと原則に近いテーマですので、生物学の入門書として、ぜひお役立てください。

ちなみに、よもやお門違いではないかと思ったものですが、本川先生は私の母校、琉球大学で教鞭を執っていらした過去がある(私の入学前ですが)とのこと。恐れ多く感じつつ、勝手に親しみを覚えているところでもあります。

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