Day24:「生物と無生物のあいだ」福岡 伸一 著(2007)

皆さんは「生物」と「無生物」の違いは何だと思いますか?

そんなの命あるものとないもの、明確極まりない愚問じゃないか、と思われることでしょう。

では生命とは何か?それは自己複製を行うシステムである。

プロローグでそんな、二十世紀の生命科学の答えのひとつを記すところから、様々な理論の説明が展開します。

といっても、専門知識をもたない一般の読者でも、サクッと理解できるような平易な解説です。
さすがは2008年に第1回の新書大賞を受賞した名著です。

そもそも「自己複製システム」とは何なのか。生き物の遺伝情報を担っているのが、DNAだというのはいわずもがな。
DNAは高分子(たくさんの原子でできたパターンのある分子)のひとつで、二重らせん構造をとっています。互いに他を写した、対となる二本のらせんで、うまい具合に配列が逆さの、ネガとポジ状態になっています。このポジを使えば、新たなネガを生産できる。
それが自己複製システムであり、細胞が分裂する際、幾重にもその情報が伝達されていくわけですね。

と偉そうに説明しておりますが、とりあえず書かれてあることをかいつまんでみただけです。まあそんな感じで、この著書は「生命の成り立ち」をかなりかみ砕いて解説されています。
さらに、そのDNA発見の歴史や、その背後の科学者たちの逸話、ご自身の学生時代や研究室での経験など、興味深いエピソードもてんこもりです。

逆に「無生物」であれば、新たな生命を生み出したり、自己修復したりといった「複製システム」はないはずだということはわかりました。
そこでウイルスを例にとります。ウイルス自体は「生きて」いません。細胞をもたず、自己増殖もしません。
しかし宿主の細胞に寄生することで、増えることができます。まるで生物のように「ふるまう」のです。
だからといって、「生物」と呼べるのか。現段階で結論は出ていません。
「生物」と「無生物」という、一見明確な線引きができないものがあるのです。

そして生命体は、複製システムにより随時その細胞が入れ替わっています。
食べたものが細胞に取り込まれ、もとあったものが排出されていく。
細胞というパーツは次々と交換され、私たち人間も実は数か月単位で、ほとんどの細胞が新しいものに入れ替わります。

その様はまるで機械や精巧なプラモデル、「無生物」のようでもあります。
もちろん無機質なパーツと違い、細胞は独自の補完作用によって修復を行うといった、無生物では到底不可能なシステムを有しています。

しかし私たちが考えている以上に、「生物」と「無生物」の境目は、あいまいな気がしてきませんか。

これらを踏まえて、著者は「生命とは何か」の答えを「動的平衡」だと結論付けます。

ミクロ(細胞)で見ると常に変化している(動的)が、マクロ(個体)で見ると変化していない(平衡状態)。
1年前の私と現在の私は、物質的に異なるものになっているけれど、私という人間が別物へ変わるわけではない。それが生命の生命たるゆえんです。

あくまで私のつたない要約ですので、ぜひ実際にこの本を手に取って、氏の生命観を味わってみてください。動的な驚きと、静かな感動があなたを待っています。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書) [ 福岡 伸一 ]
価格:1,100円(税込、送料無料) (2025/1/25時点) 楽天で購入

コメント

タイトルとURLをコピーしました