Day21:「HANA-BI」(1998)

大学生の時に映画館で衝撃を受け、日を置かず二回目を観に行った、思い入れのある作品です。

貧乏学生にとって映画鑑賞はゼイタク品。
そんな中で、同じ映画を二度も鑑賞したのは初めてのことでした。
ちなみに、二回目を観たのが最終上映日だったので、上映が続いていたら確実に三度目もあったと思います。

ビートたけしといえば、子供の頃から大好きな芸人の一人です。
ドリフターズとひょうきん族出演者は、我々の世代にとって神。
舌鋒鋭いたけしの芸風は「お笑い芸人って実は賢いんだな」と当時の子供たちを感嘆させたものです。

そんな最高に「おもしろい」たけしの、初監督作品『その男、凶暴につき』(1989)は、正直その闇の部分を垣間見たようで恐怖しかありませんでした。
そもそも不謹慎ネタで世に歯向かう姿は、あるいは人生そのものをどうでもよいと感じているのでは?と、子供心に不安を感じさせるものでした。
私はその後ファンゆえに、たけし監督作品は避けていましたし、役者として映画でシニカルな表情を見せるのも好んでいませんでした。

そして1994年のバイク事故。ついにその日が来た、と覚悟したものです。

辛くも復帰した姿は、痛々しいながらも憑き物が落ちたように見えました。
逆に、彼の魅力も損なわれるのでは、と危惧したことも否めません。しかしたけし節は健在。かつ復帰後初の監督作品『キッズ・リターン』(1996)の「再生」を描いた世界観で、ああこの人、破滅願望なくなった!と解釈して勝手に安心した私。
そして次作「HANA-BI」で度肝を抜かれるのです。

極限まで削られたセリフ。淡々とした登場人物の姿。
久石譲の織り成す旋律と「キタノブルー」の映像美の完璧なまでの融合。
その芸術センスは圧巻で、主人公が後戻りのできない道へ突き進んでいく悲壮感をも昇華していくのです。

言うまでもなく、ビデオ化されてからも何度も見直しました。

その後の作品に関しては、「好きに遊んでるな~」的な自由なものはいっそ安心して見れますし、エンタメに特化した作品の完成度は絶賛の域ですが。
私にとって「HANA-BI」は氏の作品の中で、最も感性の研ぎ澄まされた唯一無二の傑作だと感じています。

内容について多くは語りません。
一人でも多くの方に、ただ一度見ていただきたいと願うだけです。

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