もう20年近く前に発行されたものになりますが、このキャッチ―なタイトルは目をひいたものです。
このタイトル自体名作なので、これをもじった表現は、今でも随所で目にすることがあるでしょう。
極論的な結論を始めにぶつけて、その真意を紐解いていく手法がはやっていた頃でもあります。
今ほどではないにしろ、もちろん当時も「ルッキズム」についてはセンシティブでしたから、びっくりする表現です。
そう、もちろん「見た目=美醜」のハナシではありません。ご自身が教鞭を執られる、大学のノンバーバル(非言語)コミュニケーション講座の内容をまとめられたものです。
「非言語コミュニケーションについて」などと銘打っても、おそらくほとんどの方は興味をもたないでしょうから、改めて非常にうまいタイトルです。
とはいえタイトル逃げ切りではありませんよ。中身も十分魅力的な内容になっています。
目は口ほどにものをいう。その表現から始まり、「言葉」が相手に伝える情報は実に7%しかないということ(メラビアンの法則)。人がいかに相手の表情によって左右されるのかがまず語られています。
欧米人の「ジェスチャー」による非言語コミュニケーションと、日本人の「空気を読む」それの違いなども、丁寧に説明されています。
著者のいう「見た目」とは、多くは視覚に訴えかける「外見、動き、表情、色」そして「声、におい、接触」といった五感すべてで感じるものになります。
それをもって生じる「場の支配力」や、広告的イメージ戦略から個人的コミュニケーションの効果まで、具体的な説明が多くわかりやすいですね。
「さいめいふう」のペンネームで漫画の原作者をされている方ですので、漫画の技法をふんだんに用いて、見た目(登場人物の表情、カットの描き方)のもたらす効果を、大変わかりやすく説かれているのも特徴の一つです。
若干ステレオタイプな「女子」の説明に、引っかからないでもないですが、この辺は時効だと思って流していただきたい。
また劇作家・演出家でもいらっしゃるので、世阿弥の「秘すれば花」を例にあげ、役者さんなどの「間」の取り方についても言及されています。
余談ですが、ビートたけし氏の『間抜けの構造』 (新潮新書2012)で、芸人目線の「間」についてわかりやすく書かれていますので、こちらも併せておすすめしておきます。
繰り返しになりますが、タイトルだけでも賞賛に値するロングベストセラー作品です。ぜひ一度目を通していただきたい一冊です。
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