私には20代の頃より「美の先生」として勝手に敬愛している方がお二人おります。
美肌のカリスマ佐伯チズさんと、美をつくるライフスタイルの提唱者藤原美智子さんです。
親より上の世代である佐伯チズさんは、どちらかといえば美の在り方の「理論」のエキスパートとして。
ヘア&メイクアップアーティストとして、常にモデルさんや女優さんの美をかたちづくってきた藤原美智子さんは「実践」的なテクニシャンとして。
テレビ番組などでお話されているのを拝見したり、著書を読んだりするたびに「こんな年の重ね方をしたい」「こんなふうに内側から輝ける女性になりたい」と思ったものです。
いずれにせよお二方とも、ロジカルな技術だけでなく、上っ面だけではない「女性らしい美しさ」について「気付き」を与えてくれる。ストイックなのに自然体な、憧れの「大人の女性」象であり、指標となる存在でした。
そんな佐伯チズさんは、難病ALSを患い2020年に76歳でお亡くなりになられました。
訃報はショックでしたが、彼女の名言「夢は薬、諦めは毒」を体現するかのように病に向き合い、病床でも最期まで肌のお手入れを欠かさなかったという、その生きざまにはやはり尊敬の念しかありません。
一方の藤原美智子さんは、ヘア&メイクアップアーティストとしては2022年に突如第一線を退かれ、周囲を驚かせました。
私も勝手に寂しく思った一人です。
しかし引退から3年たった今、実に7年ぶりに新刊を発行してくださいました。
67歳となったご自身の、日常やそのお考えをつづった1冊です。
発売を知り、すぐに購入させていただくことに。
フォトブックのように近影のお写真が複数載せられていたのですが、これが相変わらずお美しく、むしろ輝きが増していらっしゃることに感激!
決して衰えてリタイアしたわけではなく、より自分らしい人生を楽しむために次のステージに進まれていたのですね。
72歳の父をもつ私にとって、さほど年が変わらない彼女の若々しさは感嘆レベル。50歳を目前とした私自身にとっても、希望そのものに感じます。
さらにお写真だけでなく、文面にも活力が満ちていました。
雑誌の全盛期に執筆をされてきた方ですので、過去にも多くの著書があります。
正直そのほとんどで、書かれている内容がかなり重複してはいるのですが…。
その分読むほどに、彼女の根本となる思想を知ることができます。
久しぶりとなった本書でも、その姿勢のぶれなさは随所に見て取れました。
彼女は42歳で自身の体のゆがみに気づき、ストレッチをはじめられたそうです。
体をやわらかくすることで心も整っていく過程を、いくつかの著書で拝読しましたが、今回も1章通してその効果について述べられていらっしゃいます。
そしてなんといってもすごいのが、61歳でバレエを始められたということです。
体が硬いので無理だと思っていたものの、長年続けたストレッチのお陰で挑戦できたのだとか。
おそらくその不調を感じられた42歳の時点で始めるのは難しかったでしょう。
しかしその頃からのできることの積み重ねが、60歳を過ぎて花開いたのです。
人によっては40歳でも遅く感じるくらいなのに、その時点でまだスタートの前段階。
そしてタイトル通り、何歳からでも輝けることを実践していらっしゃるのです。
最近、つくづく思うことがあります。年齢を重ねるほど自分がやりたいこと、求めていることが明確になり、迷いがなくなるぶん、物事がシンプルになり実行しやすくなる。それが大人になるよさだと。
彼女は50歳で本格的にランニングを始められていましたが(詳細は『大人ラン』(2009)にて)、バレエを始められた際に両方は無理だと感じ、やめられたのだとか。その思い切りの良さもおさすがです。進化が止まらない!
またストレッチと共に典型的な夜型生活を見直し、完璧な朝型に切り替えられたそうですが(その経緯とメリットは『美しい朝で人生を変える』(2012)で詳しく)、67歳となった今も自然とその生活を続けておられることが、本書で明らかにされていました。同時にそのころ見直した食事についても、より見識を深められ、自身のものとされているのがうかがえます。
また過去の著書では、例えば『大人の女は、こうして輝く。』(2014)で40代以上の女性たちの具体的な美容法、『LIFE IS BEAUTY~美しく幸せに生きるための逆算思考』(2018)では20~30代向け美の概念のレッスンが収められていますが。
本書でも「大人の「メイク」と「ヘア」、これが私の結論」という見出しで、先にあげた著書などで彼女が提言してきたことの、いわば完成形・集大成ともいえる内容に、しっかり1章割かれております。
アラフィフの私にとって今後の指針となること間違いなしです。
その中で「今はまだグレイヘアを選ばない」と白髪染めについても言及しておられるのですが。
実はこの部分がネットニュースになっていて、そこから私はこの本の発売を知ることになったのです。
「グレイヘア」で堂々としている方たちが着目されるようになって以来、なんとなくその方が「自然」で「よいこと」に見える風潮がありますよね。
実際40歳直前から白髪染めを始めた私も、染めるたびにどこか「ごまかしている」かの後ろめたさを感じていました。
しかし藤原氏は、ご自身がカラーリングを続ける理由について、ここで「「グレイヘア」と「自分らしさ」はかみ合っていないと思うから」とおっしゃっております。その言葉は、スッと私の中に落とし込まれました。
「自分らしさ」=「ありのままの自分」とは限らない。
白髪染めは決して不自然ではありません。
確固たる「自分」をもっていれば、なんら恥じる必要はないのです。
また避けて通れない「終活」に際して、シンプルな暮らしを求めるようになったことも述べられていました。
しかしそれは決してひっそり隠匿する意味ではなく、実に彼女らしいカラッとしたミニマリストへの転身についてです。
そして50歳でご結婚をされた彼女は(そちらのエピソードは『美の宿るところ』(2014)で)、ご主人と互いを尊重しながら、関係性を深められてきた経緯も最後に記されています。
特段結婚願望のない私でも、こんなすてきな大人婚なら…とうらやましく感じてしまいます。
とにかく。彼女が今も自分らしく輝き続けていることを知り、ただただ安堵を感じ、改めて畏敬の念を抱いている次第なのです。
昨今、美魔女の台頭で、努力によって年齢を重ねても美しくあることがしらしめられる一方。美しくないことは、すなわち「努力していない」というレッテルを貼られがちです。
美意識を高く持ち、アスリートのようにストイックに自分を磨き続ける人へ、私は心から敬意を表します。
しかし同時に、完璧であることのみを追求する必要もないのが大人の余裕だとも思っています。自分に恥ずかしくない自分でありさえすればいいのです。
私も美しくありたいけれど、実年齢より10歳若く見えたいとは思いません。
常に年齢を年輪とした、品位ある大人の女性になりたい。
この本は、そんな女性になるためのヒントが、ふんだんに詰まった一冊ではないでしょうか。
すべての年代の女性が、自分らしく輝き続けられますように。
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